07. ノック3回 (リーマス)
ノックの音が三回鳴った。
僕は苦笑してドアに向かう。まただろうかと予想して。
ドアを開けると、予想通り枕を持ったがしかめっ面で立っていた。
「どうしたの?」
彼女の身に何があったのかはとっくに見当がついているけれど、いつも通り何も知らない振りをして尋ねる。
「・・・アレが」
小さく声が返ってきた。
「アレ?」
もう判っている。
彼女が言わんとするその言葉も、彼女がその言葉を言いたくないということも。
それらを全て判った上で尋ねると、僕の脇をすり抜けて僕のベッドに腰掛けて、僕を見つめて口を開いた。
「ゴ・・・」
「ご?」
「ゴキブリが出た・・・」
学生時代、魔法薬学の時間に使用するトカゲやら蜘蛛やらは平気な顔をして掴んで刻んでいた彼女が、意外にもゴキブリだけは苦手なのだと知ったのは、こうして一緒に暮らし始めてからだった。
一戸建てのため、ソレは頻繁に家に現れる。
キッチンだったりリビングだったり。
そして彼女の部屋も例外ではないようで、自室でソレを見つけてしまった時はいつもこうして僕の部屋をノックする。
ドアを開くと枕を持った彼女が立っているのだ。
「ていうか言わなくても判ってるでしょ、何でわざわざ言わせるかなー」
「に苦手なものがあるっていうのが不思議で」
「リーマスって人の良さそうな顔してるけど、結構性格悪いね・・・。あーもう、またアースジェットしなきゃ・・・、ホイホイも・・・」
はマグルのゴキブリ退治のための道具の名前をブツブツと呟いた。
魔女でありながら魔法で何とかしようと思い付かないのが面白い。
言ってあげても良いけれど、言ってしまうのは勿体ない。
魔法という解決方法にいつまでも気付かないでくれたら良いと心の中で思った。
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20070227