06. よく眠れた?(リーマス)
朝陽が窓から差し込んで来る。
やっと朝になった。
脱狼薬を飲んでいるので安全だけど、姿を見られたくないというので、夜の間は部屋には入らないし彼の傍にもいられない。
朝になってから、私はやっと彼の部屋に入る。
「よく眠れた?」
リーマス好みの甘いミルクチョコをマグカップに入れて渡すと、疲れた顔の彼はその白い手で受け取った。
「あんまり」
苦笑して返事した。
脱狼薬を飲んで、暴れて自分を傷つけることはなくなったようだが、それでも夜は眠れないらしい。
狼に変身した翌日の朝は、今日こそはしっかり眠れただろうかという淡い期待を抱いて「よく眠れた?」と聞くのだが、彼がそれに肯定の返事をする日は未だ来ない。
私から受け取ったミルクチョコを一気に飲み干すと、ほうと息を吐いた。
それを飲むだけで、随分と気分が楽になるようで、さっきよりはすっきりした表情をしている。
私は空になったマグカップを受け取った。
「セブルスに注文でもつけたらどうだろう、脱狼薬に催眠作用のある薬を入れてくれって」
「でも脱狼薬って複雑で繊細な薬品だから、何か別の薬を入れたら効果がなくなったりするかもしれないし、ただでさえ複雑な薬を作ってもらってるんだから、あんまり注文はつけられないなあ」
確かに、とリーマスの言葉に納得する反面、満月の日が来る度に眠れない夜を独りで過ごすリーマスを思うと、胸が締め付けられる思いがする。
何故君がこんなつらい思いをしなければいけないのか。
そのとき私は何もできないのか。
やり場のない悔しさを募らせる。
沈んだ表情の私に気付いたリーマスが、ふ、と柔らかく微笑んだ。
「ありがとう。大丈夫だから、そんな顔しないでよ」
心配をかけてはいけない。
私は無理矢理笑顔を作った。
「おかわり持ってくる」
明るく言って、部屋を出る。
ミルクチョコをマグカップに注ぎながら、私は泣きそうになった。
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何かシリアス。
20070227