05. 腕の中のまどろみ
「可愛いねえー、お母さんそっくり」
「だー」
「君のお母さんは素晴らしい人なんだよ、頭も良いし美人だし、気も利くしみんなに慕われて」
「ぶー」
「ほーら、ガラガラだよー」
「あー」
ハリーと名付けられたこの赤ん坊、可愛くて仕方がない。
瞳の色はリリー譲りの緑色。
クシャクシャの髪の毛は恐らく父親譲りかな。
何を言っても反応してくれて、嬉しくて色んなことを話し掛けてやる。
「君はきっとリリーに似てしっかり者なんだろうねえ」
「ぶー」
「どうかお父さんの性格は受け継いでいませんように」
「、君は赤ん坊相手に何言ってるんだ」
「よっ、君のパパの登場だね」
「うー」
ジェームズ・ポッターが腰に手を当てて私達を見下ろして、呆れたように呟いた。
結婚しても、子供が出来ても、こんな風に悪態を吐き合うこの関係は相変わらずだ。
「何って、君の子供が君に似ないように、今の内に暗示をかけているんだよ」
「余計なお世話!いつまで経っても失礼だね君は・・・」
「君はリリーを奪ったんだ、こんなもんじゃ気が済まないよ」
からかい半分でそう言って、ねーとハリーに話を振ると、まあ内容は判っていないんだろうが、ニコニコと笑顔を浮かべてあーと返事した。
ジェームズ・ポッターははいはいとやる気なさげに返事すると、ちょっとハリーを見てくれと私に頼んで自室へ向かった。
最近彼の仕事量も増えているらしく、私に向けられる生意気な笑みの中にも僅かに疲れが見て取れる。
まあ、時期が時期だし仕方ないのだけど、こんな風に子供を友人に預けなければならないほど忙しい彼に少々同情する。
窓際のこの場所は昼下がりという時間もあってか、柔らかい光が差し込んでいる。
暖かい。
私は心地好い眩しさに目を細めた。
「・・・寝てるし」
ハリーは可愛らしい。
いつ見ても可愛い。
何してても可愛い。
安らかにすやすや眠るその寝顔は天使のようだ。
その横には。
全く、ここは誰の家だと思っているのか。
そう文句の一つも吐きたくなるぐらい彼女は安心しきって眠っている。
少しショックなのは、赤の他人のはずのの腕の中で、ハリーが本当に気持ちよさそうに眠っているということ。
もしかすると実の父親の僕といるよりも安心しているんじゃないか?と邪推してしまう。
うっかりの前でこんなことを言ってしまったらまたからかわれるに決まってる。
それを想像すると何だか腹が立ってきたから、カメラを取ってきて二人の寝顔を勝手に撮影した。
よし、これでしばらく僕がをからかえる。
この写真を見たらリリーも喜ぶだろうなあ。
リリーが写真を見て喜ぶ様子を想像すると、何だか複雑な気持ちになった。
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まどろみどころか寝ちゃったよ。
ジェームズと主人公はいつまでも悪友ですよ、きっと。
20070227