02. 「今から帰るよ」 (セブルス)
仕事も終わり、その帰りに買い物を終えると、私は鞄から携帯電話を取り出す。
マグルから見れば、それはごく普通の行為だが、魔法界に慣れてしまった私には何だか特別な行為のように感じる。
白いシンプルな携帯電話の番号を押して、電話を耳元に当てる。
数回の呼び出し音の後、相手はようやく電話をとった。
「・・・」
「もしもーし、セブルス?今何してた?」
あまり機嫌が良さそうには聞こえない声がしたのでそう尋ねてみると、やはり不機嫌な声で「薬を作っているところだ」と返ってきた。
「何でそんなに不機嫌そうなんだ君は」
「集中しているところにけたたましい騒音がすれば、私じゃなくとも不機嫌になるだろう」
けたたましい騒音とはきっと呼び出し音のことだろう。
それでも律義に電話に出てくれたんだなあと思うと、嬉しくなった。
「一日に一回しか鳴らないんだから、ちょっとぐらい我慢してよ。フクロウはマグルの世界では目立つし変に思われるって説明したよね」
「ああ、それで君は私の家に無理矢理この電話とかいうものを取り付けた」
「あーまだ怒ってる?でも帰る前に連絡入れろって言ったのはセブルスのほうじゃないか」
「文句があるなら君を家から追い出しても良いのだが」
「あーはいはい、判りました!私の負けです。口答えしてすんませんでした」
こんな路上で携帯電話を通して口喧嘩したところで、何の生産性があろうか。
右手の買い物袋は重たいし、段々腕がだるくなってきた。
周りもしだいに暗くなり、イルミネーションが光っている。
「じゃあ、今から帰るよ」
「ああ、判った」
木枯らしが髪を揺らす。吐く息は白い。
寒い。こんなところに長い時間立っていたから、手先も頬も耳たぶも冷たくなってしまった。
さっさと帰ろう。
重たい荷物を持ち上げて、私は歩き出した。
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マグルに見られたら困るので、主人公は姿くらまし・姿現しはしないことにしています
20070227