彼 の 者 の 血 を 受 け 継 ぐ 少 女
異国の地に舞い降りた一人の魔女の物語





13 Side B 罪悪感



「チクショウ、何なんだ、言うだけ言って逃げやがって」
「シリウス」

リーマスの、感情を押し殺したような声にビクリと肩を震わせた。

怒っている。
こういう声を出すとき、リーマスは大抵怒りを覚えているということに最近やっと気付いた。

俺は無言で頭を片手で二、三度掻いた。長い沈黙が続く。そのお陰か、怒りや戸惑いが、やっと収まってきた。
ゆっくりと振り返ると、無表情で俺を睨むリーマスと目が合った。

「シリウス」

謝れ、と目が言っている。さっきのは言い過ぎだ、と。
目を見ただけでそこまで理解したのは、俺自身もそう思っているからだ。正論を言われて俺は何も返すことができなくて、身勝手な想像であんなことを言ってしまったのだ。冷静になって考えてみると、本当に言いがかりとしか思えないことばかりを言った。彼女を泣かせてしまった。スリザリンは嫌いだが、今回は俺が全部悪い。

「・・・判ってるよ」

小さく呟く声が聞こえたのか、リーマスは表情に感情を戻した。緊張した空気が緩んだ。

「じゃあ、食堂行こう、に謝らないと」
「・・・・・・ああ」



急いで食堂へ向かった。さっきの彼女の泣き顔がフラッシュバックする。
悪いことをしたのかもしれない。今更ながら、罪悪感が湧き起こる。

しかし、リーマスがスリザリンの女と楽しそうに話している姿を見たとき、怒りというか、頭にかっと血が上る感覚がしたのは事実だ。あの時はどうしようもなく、ただ感情に任せるしかなかったのだ。

自分に言い訳する自分に気がついた。
何で言い訳しているんだ俺は。ああ、さっさと謝ってしまってこの心地の悪い罪悪感を取り去ってしまいたい。
自然と歩みは速くなった。



俺たちが予定していた夕飯の時間より大幅に遅れてしまっていた。先に食べていたピーターとジェームズに何があったのかを説明すると、シリウスらしい失敗だ、とあっさりと言われてしまった。返す言葉もない。

はどこだろう?」

リーマスはスリザリンのテーブルを見回したが、が見つかった様子はなかった。俺も探してみたけれど、彼女らしき顔は見つからなかった。

がいない、寮に帰っちゃったのかな」

俺はリーマスの言葉を聞いて、謝罪が先延ばしになって良かったと思う反面、さっさと終わらせたいという気持ちも少なからずあることに気付いた。
まだこの罪悪感を抱いたまま、暫く過ごさなければならないのか。
しかし、と面と向かい合うことも躊躇われた。

きっと、あの泣き顔が頭の中に蘇るに違いないからだ。

 



私の中で、シリウスはスリザリンの人間とピーターには短気です。

20060802