彼 の 者 の 血 を 受 け 継 ぐ 少 女
異国の地に舞い降りた一人の魔女の物語
10 SideB スリザリンに対する敵意
僕が学校に戻ってジェームズたちと顔を合わせたとき、彼ら(というかシリウス)が真っ先に僕に聞いたのが、
「スリザリンの女と仲が良いって本当か!」
だった。スリザリンにいる女の子で、僕が仲が良いと認識している子というのは、僕は一人しか思い浮かばない。
「ああ、のこと」
事も無げに答えると、ピーターは「ほらね!」と明るく二人に向けて言った。
「僕の言ったこと、嘘じゃなかったでしょ?」
「がどうかした?」
僕のいない間に何があったのだろうか。彼ら、というか、シリウスの口振りからして、仲良くなったとか、そういう感触ではないことは確かだ。
スリザリンとグリフィンドールは仲が悪いのは常識というか、周知の事実だ。グリフィンドールは無条件にスリザリンを嫌い、スリザリンも然り。僕やのような生徒は珍しい部類に入る。はシリウスとちょっとした揉め事を起こしたのだろうか。
僕はちょっと不安になった。
「その子が、リーマスの姿がなかったから何かあったのかって聞いてきたんだ」
ジェームズはその時の様子を簡潔に説明してくれた。
僕はに何も言っていなかった。
学校を暫く離れるとか、家に一度帰る、などは何も。
何か一言手紙を書くなり、知らせるなりしておくべきだったと少し後悔した。こんな形で僕の友人に悪い印象を持たれてしまったとしたら残念だと思う。
「なあ、止めとけって」
ジェームズの説明が終わると、シリウスは僕の両肩を力強く掴み、揺さ振った。主語が抜けていて、何を「止め」るのか、判らない。いや、予想はついているけれど。
揺さ振りの強さに「痛いよ」と漏らすとごめん、と手を離した。
「スリザリンなんか信用ならねえよ、俺はずっと見てきた。あいつら最低だ!近付かないほうが良い」
シリウスの家は代々スリザリンだった。家族も親戚も殆どが純血主義だった。シリウスは小さい頃からずっとそれを言われてきたが、シリウスはその考えを否定して、頑なに拒んだ。彼は家族が嫌いになった。その家族はスリザリンだった。だからスリザリンのことが人一倍嫌いなのだそうだ。
「でもシリウス、は純血主義を否定してるよ」
は純血主義を否定する意見を言ったところ、スリザリンから孤立することになった。けれど、彼女はその発言を未だ撤回してはいない。
それくらい、彼女は芯の強い人で、あまりにスリザリンらしくないスリザリン生なのだ。
「そんなの、本心でそう思っているかなんて判んねえだろ」
シリウスは僕の言うことには耳も貸さなかった。彼はを知らないから、そう思うのも無理はないだろう。今まで会った彼の親戚と重ね合わせて、本心ではそう思っていなくても、世渡りのために自分は純血主義ではない、と言っていた親戚がいたのかもしれない。
僕はシリウスを説き伏せることを止めた。これ以上何を言っても変わらない、と悟ったからだ。
僕はが心配になった。僕の友人たちを嫌いになったかもしれない。
恐らくシリウスはに失礼なことを言ったり、しただろうからだ。
僕は部屋に帰ると手紙を書くことにした。
← →
いつもに増して短いです。ごめんなさい。
20060716